夫婦関係が悪化し離婚を考えている人のなかには、円満に離婚をしたいと考える人が少なくありません。
円満離婚を希望する人の多くは、「協議離婚(話し合い)」を選ぶ人がとても多いです。
「協議離婚」は、離婚全体の「87.2%」を占めています。以前に比べて少し下がってきていますが、それでも、世の中の離婚の約9割は「協議離婚」です。夫婦2人の間で相談がまとまり、「離婚届」を出して終了しています。
「引用:シニアガイド(「協議離婚」の割合は87.2%、「調停離婚」は10.0%)」
上の記事を見ると、離婚をした約9割の方が「協議離婚」を選び、夫婦の話し合いで離婚を決めているのがわかります。
そこでこの記事では、「協議離婚」にスポットをあてて、協議離婚のメリットや流れなどをまとめてみました。
この記事はこのような方に向けて書いています
- 円満離婚したいがどうしたらいいかわからない
- 協議離婚ってどんな方法?
- なるべく穏便に離婚したい
まずは「協議離婚」のメリット・デメリットから見ていきましょう。
「協議離婚」には4つのメリットがある
円満離婚のメリットは、以下の4つです。
- お金がかからない
- 簡単で時間がかからない
- 夫婦がもめにくい
- 夫婦が良好でいられて子どもへの影響が少ない
メリット①お金がかからない
「協議離婚」の一つ目のメリットは、お金がかからないことです。
自分で離婚調停を申し立てるには、申立費用の約3,000円程度と、必要書類の費用などがかかります。
しかし、申し立てを弁護士に頼むと数十万かかる場合があります。
また、調停がこじれて離婚裁判になると、離婚請求のみで約1万3,000円かかります。
離婚裁判では、財産分与や養育費、慰謝料請求などがあるため、それ以上かかります。
そして、金額は人によりますが、プラスで弁護士の着手金や報酬などの費用もかかるため、数十万円が必要です。
メリット②簡単で時間がかからない
2つ目の「協議離婚」のメリットは、裁判所を通さず手続きが簡単なので、時間がかからないことです。
一般的に協議離婚は、離婚の話し合いで合意ができたら、離婚届けを提出したら離婚が成立します。
離婚調停は、結果が出るまでに1年以上かかることが多く、離婚の決着まで時間がかかります。
さらに、離婚裁判は、離婚提起から判決までに1~2年かかることが多いです。
しかし、円満離婚にあせってしまい、新しい生活に支障が出てしまうことがあるため注意しましょう。
円満離婚でも、約半年から一年くらいの余裕をもって、後悔のないように話し合うことが大切です。
メリット③夫婦がもめにくい
「協議離婚は」は夫婦の話し合いで、お互いが納得する条件で話し合えるためもめにくいといわれています。
一度夫婦がとことん話し合い納得して離婚するため、あとで養育費が支払われないなどというリスクが減ります。
また、円満離婚は調停や裁判のように、離婚理由を問われないのもメリットかもしれません。
しかし、話し合いで決裂した場合は、離婚調停に持ち越されることがあります。
メリット④夫婦が良好でいられて子どもへの影響が少ない
良好な関係が続き、子どもへの影響が少ないのも、「協議離婚」のメリットといえます。
一般的に調停や裁判になると、離婚後に夫婦が良好な関係を築くのは難しいかもしれません。
しかし、「協議離婚」の場合は、比較的離婚後も良好な関係が保たれることが多いです。
離婚で良心が争うのは、子どもにとってとてもつらいことです。
しかし、両親が良好な関係を続けることで、離婚後の子どもへの影響が少なくすみます。
立憲民主党は、離婚後も父母双方が子の親権を持つ「共同親権」導入を柱とする民法などの改正案について、要件を厳格化する修正案をまとめた。現行法は、離婚後の親権を父母のいずれかが持つ「単独親権」のみが認められている。改正案は、父母の協議で「共同」か「単独」かを選択できるようにし、一致しなかった場合は家庭裁判所が判断する
「引用・参考:時事通信「共同親権」巡り修正要求=世論の賛否両論踏まえ―立民」
「協議離婚」のデメリットは時間や精神的負担がかかること
「協議離婚」のデメリットは、精神的負担があることです。
協議離婚でも、話し合いをして決めるので、平日の夜や休日なども、話し合いに費やされる時間が必要です。
協議離婚で、話し合いが終わるまでの期間は、話し合いでプライベートな時間を割かれると思っておく必要があります。
また、離婚の理由が浮気やDVの場合は、証拠を集めるなどの時間がかかります。
一般的な円満離婚よりは、時間がかかると思っておいてください。
特に、円満離婚を望む場合は、あせらず時間をかけて夫の合意を得ることが大切です。
「協議離婚」がこじれてしまうと、「離婚調停」や「離婚裁判」に発展し、想定外の長期戦になる可能性が高まってしまいます。
また、「協議離婚」は裁判所を通さずに決めるため、後々もめることを避けるため公正証書の作成がとても重要だということを覚えておいてください。
「協議離婚」の4つのステップ
ここでは「離婚協議」の流れを4つのステップで説明します。
ステップ①夫婦で話し合い、離婚に合意し条件を決める
5.1「離婚の話し合いに必要なもの」離婚で夫婦が話し合うべきことの表を参考にして、「離婚協議」をします。
離婚条件に、お互いが納得して合意するまで話し合います。
ステップ②離婚協議書を作る
「協議離婚」でお互いに離婚条件に合意したら、離婚協議書を作成します。
離婚協議書は、夫婦で話し合って決めた約束を書面化したものです。
離婚協議書は特に様式が決められてないため、自分で作成する必要があります。
ネットのサンプルをダウンロードして使うこともでき、弁護士に作成してもらうことも可能です。
「参考:離婚協議書の書き方サンプル(弁護士法人デイライト法律事務所)」
ステップ③公正証書を作る
離婚協議書を作成したら、法的な拘束力を持たせるために、公正証書を作成します。
公正証書は中立・公正な立場で、公証役場の公証人にお願いします。
公証役場は、各地にある法務局の管轄する機関となり、全国約300箇所に設置されています。それぞれの公証役場には、公正証書を作成する公証人が必ず1名以上は配置されています。
「引用:船橋つかだ行政書士事務所・婚姻費用@合意書サポート」
公正証書は、裁判の判決と同じ効力を持っており、慰謝料や養育費などの約束事が守れない場合、財産の差し押さえなど強制執行が可能です。
一般的に、公正証書を作成すると、強制執行するためには、調停や裁判を行う必要があります。
公正証書のメリットは、その過程をカットできることです。
離婚協議書は自作がOKですが、公正証書は自作ができないので注意しましょう。
「参考:日本公証人連合会・公証役場一覧」
ステップ④役所に離婚届けを提出する
あとは、役所に離婚届を提出して、円満離婚が成立します。
「協議離婚」の切り出し方で大切なこと
一刻も早く離婚がしたいとあせるあまり、失敗してしまうと円満離婚が遠のいてしまうことがあります。
協議離婚で大切なのが、時間をかけて話し合い、お互いに納得したうえで離婚を決めることが大切です。
冷静に相手を思いやりながら切り出す
絶対にやってはいけないのが、喧嘩の途中で離婚を切り出すことです。
相手の顔を見るのも嫌で、感情的になってはいけません。
こちらが感情的になると、相手は円満離婚を拒否する可能性があります。
円満離婚に導きたいのであれば、焦らず冷静にはっきりと切り出すことがとても大切です。
相手の立場になって話をよく聞く
円満離婚を切り出す場合、自分ばかりでなく、相手の立場になって発言しましょう。
また、離婚を切り出した時、相手は修復したいといってくる可能性があります。
その場合は、あなたに修復の考えがまだ残っていたら、相手の話をよく聞きましょう。
しかし、離婚の意思が固い場合は、逆に相手を説得する必要が出てきます。
修復ができない理由を冷静に、かつしっかりと説明しましょう。
相手を責めすぎない
円満離婚を切り出すときは、相手をののしるような言い方は逆効果です。
どこで子どもが見ているかもしれませんし、後味が悪くなってしまいます。
円満離婚は、お互いが納得したうえで離婚をすることです。
円満に解決するには、相手の意思を尊重しながら、相手を説得することがとても大切です。
円満離婚を望むのであれば、憎みや怒りの感情は今だけは抑えて、話し合いをしましょう。
離婚条件にこだわりすぎない
離婚で一番問題になるのがお金です。
離婚問題では、財産分与や慰謝料、親権、養育費など話し合うことがたくさんあります。
離婚の話し合いで特に多いのが、少しでもいい条件で離婚したいと思う人です。
離婚後の生活に困らないよう、お金の問題にこだわるのはしごく当然ではあります。
しかし、円満離婚をしたいのであれば、あまりお金にこだわりすぎると、話し合いが決裂してしまうのが注意が必要です。
あくまでも公平さを第一に考えて、歩み寄れるよう話し合いにのぞんでください。
「協議離婚」であなたが準備しておきたいこと
円満離婚の話し合いをする前に、必要なものを確認し、用意しておきましょう。
また、あなたの離婚後の生活についても、しっかりと考えておく必要があります。
以下に、それぞれ詳しく説明しますね。
離婚の話し合いに必要なもの
離婚では、お金に関することと子供に関することは、条件をしっかり決めることが大切です。
離婚の話し合いの前に、必要な書類などを必ず確認し、事前準備をしておきましょう。
離婚で夫婦が話し合うべきことは、以下のとおりです。
財産分与 | 夫婦の共有財産を分けることで、財産分与の割合は原則的には二分の一ずつ分割する。(例)自宅(不動産)、車、保険、貯金、有価証券、退職金、家具・家電など |
年金分割 | 年金事務所で「年金分割のための情報提供請求書」を提出し、詳しい情報提供を受ける |
慰謝料請求 | 浮気などの不貞行為やDVなどが原因の場合、精神的苦痛に対する慰謝料を請求できる。 |
親権 | 親権とは子供を引き取り監護する(見守る)権利で、話し合いで決めた結果を離婚届に記載する |
養育費請求 | 子どもに必要な養育費用で、一般的には成人まで受け取れると考えられている。協議離婚では、自分たちで金額を決定する |
面会交流 | 定期的に子どもと交流できる権利。一般的に養育費と一緒に決めることが多い |
財産分与
財産分与を行う場合、夫婦の共有財産をあらかじめリストアップしておきましょう。
財産分与で特に複雑なのが、住宅ローンが残っている場合は、すぐに財産分与ができません。
まずは契約内容を確認して、夫が主債務者の場合や妻が連帯保証人出ない場合、離婚後妻にローンを負担がありません。
離婚時に住宅ローンが残っている場合、一般的に売却するのがもっとも簡単な方法です。
売却金でローン残高を完済すれば、離婚後に夫婦のどちらかがローン支払いをする必要がありません。
しかし、不動産の価値がローン残高を下回っている場合(オーバーローン)、住宅ローンを完済できません。
その場合は、離婚後に債務者や保証人が支払をすることになります。があ
養育費
子どもがいない夫婦は、相手の不貞行為で離婚する場合は、慰謝料請求が可能な場合があります。
しかし、養育費請求がないため、子あり夫婦よりは比較的スムーズに円満離婚が進みことが多いです。
ただし、財産分与や年金分割でこじれてしまうと、長引くこともあります。
あなたの離婚後の生活を考える
1番大切なことは、あなたが離婚して幸せになれるのかどうかです!
幸せの感覚はひとそれぞれなので、まずは以下がクリアできるかどうかを、考えてみましょう。
- 経済的に自立できるか
- 住居は決まったか
- 仕事が見つかるまで生活できる余裕はあるか
- 一人暮らしがつらくないか
- 誰か相談できる人はいるか
離婚後の生活を考えたうえで、後悔がないように夫婦でよく話し合いましょう。
「協議離婚」でこじれたら「離婚調停」で解決する
「協議離婚」で、夫婦が話し合いで解決できない場合があります。
そんなときは「離婚調停」で、解決する選択肢もあります。
「離婚調停」は、中立で公平な第三者が間に入って、離婚に向けて話し合いをします。
「離婚調停」のメリットは、二人だけの話し合いは感情的になるが、間に仲介人が入ることで冷静な話し合いができることです。
離婚が前提ではない「円満調停」もあります!
「円満調停」は、離婚が前提でなく、夫婦関係を円満に戻すための話し合いです。
正式には「夫婦関係調整調停(円満)」といいます。
「離婚調停」と同様に、家庭裁判所内で第三者が介入し、夫婦で話し合います。
まとめ
協議離婚のメリット・デメリット、流れ、切り出し方などを紹介しました。
「協議離婚」には4つのメリットがありますが、時間がかかり精神的負担がかかるというデメリットもあることを覚えておいてください。
また、「協議離婚」は夫婦だけの話し合いのため、相手に納得してもらわないと解決できません。
冷静になり、相手を思いやり相手の立場になって話をよく聞くことがとても大切です。
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