近年、熟年離婚を選ぶ夫婦が増えているそうです。
熟年夫婦というと、子育てが終了して夫婦二人だけの時間が増えるとき。
そして、夫が定年退職を迎えると、二人で共通の趣味や旅行などを楽しむ夫婦が多いと思います。
さまざまな困難を乗り越えてきた熟年夫婦が、なぜこの時期に離婚を選ぶのでしょうか。
2020年に離婚した夫婦のうち、20年以上同居した「熟年離婚」の割合が21・5%に上り、統計のある1947年以降で過去最高になったことがわかった。厚生労働省が24日公表した。
「引用:2022年8月24日付・朝日新聞デジタルより」
熟年離婚とは、50歳以上から70歳代で、年齢を重ねたもの同士の離婚のことです。
私自身も50代で、親族に離婚問題が起こるなど、離婚が他人事とは思えません。
熟年離婚では、若い年代の離婚とはちょっと違う、特有の原因があるといわれています。
この記事では、熟年離婚特有の原因やデメリット、準備や心構えなどをまとめてみました。
この記事はこんな方に向けて書いています。
- 熟年離婚の原因ってなに?
- 熟年離婚を考えており、メリット・デメリットを知りたい
- 熟年離婚で準備すること
熟年離婚の5つの原因とは?
熟年離婚の主な原因は、次の5つと考えられています。
- 夫婦の価値観の違い
- 夫の浮気
- 夫の在宅時間の増加
- 子どもの自立
- 介護拒否
このうち、1~3はどの年代の離婚でも、ありがちな原因です。
4、5は熟年離婚特有の原因と考えられ、離婚を後押しする要因なのかもしれません。
以下で、1~5をそれぞれ考えてみました。
価値観の違い
離婚の理由を聞かれると、多くの人が「価値観の違い」と答えます。
熟年離婚の場合も、お互いの価値観の違いや性格の不一致はあると思います。
しかし、熟年だからこそ、「残りの人生は自分のために使いたい」という人がとても多い気がします。
長い結婚生活で、お互いの金銭感覚のズレや、家事の分担なども考えられますよね?
何十年も生活を共にしてきたのに、「いまさら価値観?」と思う人がいるかもしれません。
しかし、相手の価値観に違和感がありながら、離婚に踏み切れなかった場合はどうでしょう。
特に、専業主婦は「子どもがいるし、収入もないから離婚はちょっとできない・・・」
そう思いながら、我慢して生活してきた女性は少なくないかもしれません。
時代の移り変わりで、我慢をするくらいなら、離婚して一人になりたいと考える人が増えてきたように思います。
きっと、離婚を後押しする何かがあり、熟年離婚を選ぶ女性が増えてきたのかもしれません。
夫の浮気
夫の浮気が原因で、熟年離婚になるケースがあります。
浮気が原因の離婚は、どの年代にもあるので珍しいことではありません!
しかし、最近は熟年男性が自由に使えるお金や時間が増えることで、「熟年不倫」に走る人が増えていると聞きます。
どこで出会うのかというと、ネットの出会い系や趣味の集まりなどに参加し、そこで意気投合したというケースが多いです。
ネットやスマホの普及で、昔より出会いのチャンスが増えてきたことも、浮気の一因になっているかもしれません。
では、夫に浮気や不倫をされた妻は、こうときにどう対応するのか?
- 夫と話し合い、やり直すことを選ぶ
- 信頼関係が崩壊し、離婚や別居を選ぶ
以上、2つの選択肢がありますが、なかには浮気に気づいていたが、ずっと仮面夫婦を続けていたという人もいます。
また、浮気などの不貞行為では、慰謝料請求が発生することがあります。
夫の在宅時間が増えた
旦那が毎日家にいてご飯の用意が大変なのよ!
俺は料理が苦手だからしかたないだろ?
熟年離婚が増えた一つの要因として、夫の在宅時間が増えたことがあります。
最近では、新型コロナウイルスの感染拡大で、自粛生活が始まりリモートワークが増えました。
そして、どの年代でも夫が家にいることが増えたことで、離婚になった夫婦が増えたとニュースで見ました。
夫が定年退職した夫婦は、暇な夫が家事をまったく手伝わず、家にずっといることが離婚につながるケースもあります。
夫の在宅時間が増えると、妻は今までの生活スタイルやルーティンが崩れてしまいます。
そして、ストレスを感じて、体調を崩すことがあります。
我が家でも、料理をしない夫にイライラしてしまい、ぶつかることが度々あったのを思い出しました(;^_^A
妻がストレスを抱えても、夫が反省しないままどんどん溝ができて、修復できずに離婚に至るのかもしれません。
子どもの独立
子どもの独立が、熟年離婚の原因になることがあります。
子どもが独立し、夫婦二人だけの時間が増えたという熟年夫婦はとても多いです。
今までは、夫婦間の共通の関心事に「子ども」があったのに、関心事の「子ども」が離れたことで夫婦関係が薄れてしまうとか。
子どもが心の生活だった家庭では、子供のために夫婦が一緒に何かをすることがなくなり、距離が生まれます。
特に、普段からコミュニケーション不足の夫婦は、夫婦関係が崩れやすく、離婚になってしまうのかもしれません。
介護拒否
介護拒否が原因で熟年離婚になることが少なくありません。
介護拒否でも、下記のような3パターンが考えられます。
- 夫の両親の介護を拒否したい
- 夫の介護を拒否したい
- 夫に介護されたくない
夫の両親の介護では、どうしても妻だけに負担がかかってしまいがちです。
妻は負担が重荷に変わり、夫が何もしてくれない場合、離婚を選ぶことがあります。
また、夫の介護拒否の場合は、今までの夫の思いやりのない言動から、介護をする気がなくなり早々と離婚を決断するようです。
妻は「自身の人生を犠牲にしてまで、この人を介護したくない」と、自分の人生を優先します。
また、熟年夫婦のなかには、妻側が「この人にだけは介護されたくない」と、離婚を選ぶパターンもあるようです。
熟年離婚のデメリット
熟年離婚では、以下のような熟年特有のデメリットがあるといわれています。
- 孤独・孤立による不安
- 健康面の不安
- 経済的な不安
- 家族関係の変化
これらのデメリットは、離婚後の生活の大きな変化による精神的なものです。
たとえ、これらのデメリットがあっても、離婚しか考えられない人や離婚を決意した人は、十分に準備をして行動する必要があります。
以下に、それぞれのデメリットを説明します。
孤独・孤立による不安
個々の状況や性格によって違いますが、離婚した妻が孤独や社会的孤立感を感じることがあるようです。
子どもはすでに独立して、家族関係が変化して家庭内の支えがなくなることで、精神的に不安定になってしまいます。
友人が多い場合は、相談相手がいるので気がまぎれるかもしれません。
また、新しい仕事や趣味を見つけることで、孤独感や孤立感をそれほど感じず生活できるでしょう。
健康面の不安
熟年離婚の孤独や不安からくるストレスは、心身の健康に影響を及ぼすことがあります。
実際に、熟年離婚をした後、健康診断で病気が発覚した人の動画を見たことがあります。
特に、高齢者の場合は、ストレスからの体調不良になり、家事ができなくなって食生活まで影響してしまうことが多いです。
経済的な不安
熟年離婚では、財産や年金の分配などが必要で、思うような結果が出ない場合、経済的に不安になります。
新生活で一人暮らしになったとたん、 生活費のことで経済的に不安になる人が少なくありません。
経済的に不安のある人は、生活面の不安を解消するために、家族や友人、専門家の支援を受けたほうがいいでしょう。
熟年離婚で、経済的な不安に陥らないためには、夫婦が経済的に安定していることがとても重要です。
家族関係の変化
熟年離婚では、子どもや孫までの家族関係に、影響を与える可能性があります。
子どもが熟年の親の離婚を受け入れられればいいですが、不安や混乱を感じるかもしれません。
親の離婚で気づくのは、幼い子どもだけはなく、成人した子どもにも影響はあるんです。
「参考:熟年離婚は成人した子どもにも影響を与える」
また、離婚自体をよく思わない古い考えの親戚がいる場合、親族間の関係も変化すると考えられます。
可能であれば、家族や親せきなどのサポートが受けられるか、新しい人生を健康的に乗り越えられるかなどをよく考えてみましょう。
熟年離婚のメリット
熟年離婚を決断しやすくなった背景には、次の2つの要因があるのではないでしょうか?
- 経済的に自立した妻が多い
- 2007年に離婚の年金分割制度が整備された
熟年離婚のメリットは、夫に縛られることなく、自分の人生を自由に生きられることでしょう。
夫婦関係がストレスになっていた人は、新しい生活によって、精神的な満足感や充実感を感じると思います。
離婚後は、夫に縛られず自分の幸福だけを考えて、新しい趣味や関心事などに没頭することができます。
ただし、熟年離婚にはリスクが伴うことも忘れずに、慎重に答えを出す必要があることも覚えておいてください。
熟年離婚で必要な手続き
- 経済的な安定を失う
- 孤独感・孤立感により、心身の健康に異常をきたす
- 子供や孫へ悪影響
熟年離婚をすると決めたら、必要な手続きをする必要があります。
離婚をあせるあまり、必要な手続きを怠ると、後悔することになるので注意してください。
女性が離婚して安心して暮らせるために、しっかりと準備をして進めることが大切です。
以下に、熟年離婚の必要な手続きを、流れで見ていきましょう。
離婚後の住宅の確保
熟年離婚では、自宅をどちらが引き継ぐのか、自宅を売却する場合は、売却代金はどうするのかを考える必要があります。
離婚後に自宅を出ることが決まったら、早めに新居を探しましょう。
ただし、高齢者の場合は、賃貸契約で不動産会社の審査が通りにくい場合があります。
信頼できる不動産会社などとコミュニケーションをとって、適切な物件を見つけてもらいましょう。
また、今まで専業主婦だった人は、仕事がすぐに見つかる保証はありません。
どこに住むのか、仕事はどうするのかなど、早い段階で目星をつけておく必要があります。
専門家のアドバイスを受ける
離婚を決めたら、弁護士などの専門家のいろいろ相談しましょう。
専門家のアドバイスを受けることで、離婚に関する手続きがスムーズになります。
離婚したあとに、経済面や生活面で困ることがないように、確実に手続きを進めていくことがとても大切です。
離婚に必要な書類を揃える
離婚の手続きをする時は、以下のさまざまな書類を用意します。
離婚届 | 離婚する際に役所に提出する書類 |
結婚証明書 | 離婚する夫婦が結婚したことを証明するための書類 |
配偶者の同意書 | 夫婦のどちらかが離婚を申請する場合、もう一方の配偶者の同意が必要な場合がある |
財産分与に関する書類 | 財産分与の場合、不動産の登記簿謄本、預貯金通帳、株式や保険の証券などが必要 |
年金分割に関する書類 | 年金分割の手続きで必要になる(年金受給状況の証明書、年金分割の合意書など) |
子供に関する書類 | 夫婦に子供がいる場合、親権や養育費などに関する書類が必要 |
身分証明書 | 身分を証明するための書類(パスポート、運転免許証、健康保険証など) |
ちなみに、離婚届は、役所や家庭裁判所で入手し、手続きは役所の戸籍係や婚姻届受付窓口で行います。
地域によっては、離婚届をオンラインで申請可能なところもあります。
また、結婚証明書も役所で入手しますが、インターネットや郵送が可能な地域もあるので確認してください。
離婚の方法を選択する
離婚には、次の図のように協議離婚、離婚調停、離婚裁判の3種類があります。
協議離婚で合意が不成立の場合は、離婚調停になります。
そして、離婚調停で不成立の場合は、離婚裁判での判決で決着をつける流れです。
種類 | 概要 | メリット | デメリット |
協議離婚 | 夫婦が弁護士などと協力しながら話し合う。法廷で争わずに、夫婦が協力して解決する。 | 費用が低く、時間の節約になる。 | 弁護士などの協力が必要なため、問題が複雑な場合は費用が加算される可能性がある。 |
離婚調停 | 中立的な第三者(調停者)を仲介者にして、夫婦で話し合う。 | 費用が低く、対立を減らし、コミュニケーションの改善が可能。 | 対立が深刻な場合や感情的な問題がある場合、コミュニケーションが困難。 |
離婚裁判 | 離婚条件で合意に至らず、法廷で争う。夫婦間の対立が深刻で、協議や調停で問題を解決できない場合に選択する。 | 対立が激しい場合や、複雑な問題がある場合に適している。 | 費用や時間がかかることがある |
財産分与・年金分割・慰謝料などを確認する
今まで、配偶者の収入や社会保険で暮らしていた場合、離婚後に収入が減ることで生活不安が生まれます。
特に熟年離婚の場合は、妻の再就職や収入を増やすのは簡単ではありません。
また、熟年離婚の際は、財産分与や年金分割、社会保険、慰謝料などを決めます。
- 財産分与
- 年金の分割
- 医療保険
- 慰謝料
財産分与
熟年離婚では、退職金などもあり若い世代よりも資産が多く、財産分与の金額が高額になります。
離婚をした者の一方が他方に対して財産の分与を請求することができる制度です。
財産分与は,(1)夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の公平な分配,(2)離婚後の生活保障,(3)離婚の原因を作ったことへの損害賠償の性質があると解されており,特に(1)が基本であると考えられています。
「引用:首相官邸ホームページ(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00018.html)」
一般的に、以下のような財産が対象です。
- 不動産(土地・家屋)
- 金融資産(預貯金・退職金・株式など)
- 保険商品(年金・生命保険・健康保険)
- 車両(自動車・バイク)
- 家具・家電
財産分与って誰が決めるの?
まずは夫婦の話し合いで合意か、調停で仲裁人を入れての話し合いで決めます。それでも合意しなければ、法的手続きに基づいて裁判所が決定します。
年金分割
熟年離婚では、年金も財産の一部として考えられており、財産分与とは別に、年金分割の行われることがあります。
年金分割は、熟年離婚の際の手続きのなかでもとても重要です。
離婚後、経済的に安定した生活をするために、いくらもらえるのかも心配になりますよね?
年金分割とは、熟年離婚の際に、夫または妻が受けている年金の一部を相手に分割することをいいます。
年金分割には「合意分割」と「3号分割」があります。
合意分割とは、夫婦の話し合いで合意に至り、裁判所がそれ承認して分割手続きの完了です。
一方、3号分割は、話し合いで合意に至らなかった場合、離婚調停や離婚訴訟で決定します。
どちらの方法も、2年以内の期限があり、期限内に手続きをする必要があります。
年金分割の対象となるのは、以下のとおりです。
- 公的年金(基礎年金や厚生年金)
- 企業年金
- 個人年金(私的な年金)
年金分割ってどんな計算するの?
具体的な計算方法や手続きは、地域や国の法律によって異なります。
個々の状況によって適切な手続きが行われます。
年金分割に関しては、行政機関や法律相談所、弁護士事務所などで、アドバイスを受けることができます。
また、年金分割で決められた年金は、受給開始年齢に達した時点で受け取れます。
ただし、分割された年金は、元の加入者の年金とは別に、相手方が新たに受け取るものです。
「参考:日本年金機構(離婚時の年金分割)」
健康保険
健康保険証はどうなるの?
離婚後、健康保険が自動的に切り替わることがないため、自分で手続きが必要です。
今まで専業主婦で、夫の会社の医療保険に加入していた場合、配偶者の勤務先から「資格喪失証明書」をもらいましょう。
そして、正社員で働く場合は、就職先に「資格喪失証明書」」を提出し保険に加入します。
パートの場合は、役所に「資格喪失証明書」を提出して、国民健康保険に加入します。
慰謝料
熟年律婚で、次のように精神的な苦痛や損害を与えられた場合、慰謝料を請求が検討されます。
- 浮気などの不貞行為
- DVなど精神的苦痛を受けたとき
浮気で慰謝料請求を行う場合は、証拠が必要になります。
例えば、浮気相手とのLINEや通話履歴、写真や、ビデオ、GPSの位置情報などが証拠になります。
また、DV被害の慰謝料請求でも、暴力を証明する証拠が必要です。
例えば、DVの被害届、暴力行為の証言や記録、医師の診断書などが証拠になります。
具体的な慰謝料の要求や金額などは、それぞれのケースによって異なり、法律や裁判所の判断で決定されます。
熟年離婚では悲惨な生活にならないための心構えが必要
熟年離婚の原因やデメリット・準備・心構えなどを紹介しました。
熟年離婚は新しい生活が始まる一方で、経済的な問題などリスクを伴うことがあります。
特に、熟年離婚では、子供や孫への影響、親族との関係や相続に関する問題などが起こる可能性があります。
そして、熟年離婚で最も心配されるのが、精神的な負担や孤独によるストレスで、体調不良になることです。
体調面・感情面で問題が起こったとき、相談できる人を見つけておきましょう。
この記事を参考にして、熟年離婚後に悲惨な生活にならないための心構えとして心に止めていただけたら幸いです。
悲惨な熟年離婚を何とかして回避したいと考えている方は、下の記事が大変参考になります。
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