夫婦どちらかの借金発覚で、夫婦関係にひびが入ることがあります。
多額の借金や借金の理由によっては、離婚にまで発展してしまうかもしれません。
今更だけど夫の浮気、暴力、借金で離婚したんだけどなんで夫と不倫相手に慰謝料取らなかったんだろー
傷つきすぎてそんな気力なかったもんな
(浮気成敗動画見てる)— Ophelia (@Ophelia222223) April 17, 2024
そもそも借金を抱えた状態で、離婚は成立するものでしょうか?
そこでこの記事では、借金が理由の離婚についてまとめてみました。
この記事はこんな方に向けて書いています
- 夫(妻)が借金をして遊び歩いているので離婚したい!
- 夫(妻)の借金って自分にも返済義務があるの?
- 借金はどうやって整理したらいいの?
この記事を読むとわかること
- 自分び配偶者が作った借金返済の義務はあるの?
- 借金を減額するための方法が知りたい
- 借金が理由で離婚したいときの注意点
- 離婚はせず結婚生活を継続したい人がやるべきこと
度を超えた借金は夫婦で合意ができれば離婚は可能
結論からいうと、夫婦の話し合い(協議離婚)で合意ができれば、借金で離婚することはできます。
なぜなら、協議離婚(夫婦の話し合い)では、離婚理由は問わず夫婦の合意で離婚ができるからです。
しかし、相手の借金を自分が肩代わりしなければならないのか、離婚時の「財産分与」も気になるところです。
基本的に、次のような借金は常識の範囲内であれば問題がなく、離婚理由にはなりません。
- 住宅ローン
- 自動車ローン
- 銀行からの融資
- 奨学金
しかし、以下のような借金は、度を超えていたり配偶者に隠れて何度も借りていたりする場合は離婚となる可能性が高いです。
- クレジットローン
- サラ金・闇金
基本的に配偶者の借金返済は本人に返済義務がある
基本的に配偶者が作った借金は、配偶者自身に返済義務があります。
例えば、結婚前からの借金やギャンブル・娯楽などの個人的な借金は、財産分与の対象外であり、借金した本人のみが返済しなくてはなりません。
「参考:【離婚後の借金】離婚してもチャラにはならず折半になる借金とは?」
しかし、以下のような借金は、夫婦で返済しなければならない場合があります。
- 夫婦の生活費「日常家事債務※」の借金
- 自分名義や家族カードの借金
- 住宅ローンなどが残っていた場合
- 借金の連帯保証人になっていた場合
※「日常家事債務」とは、家賃や生活必需品の購入費、光熱費、携帯代、医療費など生活のための費用
上記の借金は、離婚しても返済義務は消えないため注意が必要です。
ちなみに、一度保証人になると、離婚後も保証人から外れることができません。
保証人から外れたい場合は、新しい保証人を探すかローンの借り換えが必要です。
話し合いで合意されない場合「離婚調停」や「離婚裁判」で決着
夫婦の話し合い(協議離婚)で離婚の合意が得られなかった場合は、「離婚調停」や「離婚裁判」の場で決着をつけます。
こちらは、「協議離婚」よりも離婚へのハードルが高くなり、難易度が変わるので注意が必要です。
以下に、それぞれ見ていきましょう。
〈離婚調停〉調停委員を間に入れて話し合いで合意すれば離婚できる
裁判所に「離婚調停」を申し立てて、調停の結果夫婦二人の条件に折り合いがつけば、「調停成立」になり借金を理由に離婚が成立します。
しかし、調停も調停委員を間に挟んでの話し合いのため、ここでも合意が得られなければ、離婚訴訟になります。
ちなみに、離婚調停は書類の準備などがあり、成立まで約3~6ヶ月かかります。
〈離婚裁判〉条件にあてはまると判断された場合のみ離婚が認められる
「離婚調停」が不成立に終わった場合は、家庭裁判所で「離婚訴訟」を行い、離婚を認めてもらいます。
「裁判離婚」では、基本的に借金があるというだけでは離婚が認められません。
借金が、婚姻を継続するのが困難だという「法定離婚事由」に相当するかが問われます。
「離婚裁判」は、民法第770条第1項(法定離婚事由)に則って進められます。
民法第770条第1項とは、以下のとおりです。
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
民法第770条第1項については下の記事の「2.離婚したくない夫が合意しなくても離婚できるケースがある」が参考になります。
民法第770条第1項の5つの条文には、「借金」という文字はどこにも見あたりませんよね?
裁判では配偶者の借金が、以下の2つにあてはまると判断された場合、離婚が認められる可能性があるんです。
- 二 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
借金で離婚が認められる可能性が高いケースは次のようなケースです
・借金を繰り返し生活が困窮した
・借金をギャンブルにつぎ込み生活困難
・結婚後に相手の高額な借金を知った
・借金をして浮気相手にお金をつぎ込んだ
・借金以外にDVもあった
借金を減額するためには債務整理が必要
借金を理由に離婚を考える前に、まずは借金を減額することで夫婦の不安が減少します。
借金を合法的に減額する方法には「債務整理」という制度があります。
「債務整理」には、以下の4つの方法があります。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
- 特定調停
そして、借金のなかには「債務整理」が可能なものとそうでないものがあります。
「債務整理」が可能なもの
- 各種ローン(住宅ローン、車のローン、銀行系カードローン、消費者金融のローンなど)
- クレジットカード
- 携帯料金滞納分
- 公共料金の滞納分
- 個人からの借入
「債務整理」が不可のもの
- 公的な保険料(社会保険料、年金)
- 税金(固定資産税、住民税)
- 養育費・慰謝料
「参考:債務トラブル119番(債務整理ができないケースとは?状況別のできない理由を詳しく解説)」
以下に、4つの「債務整理」の方法を、それぞれを詳しく説明します。
借金を減額する方法①任意整理で毎月の借金返済額を減らす
任意整理は、借金を減らして毎月の返済をラクにする手続きです。
貸した人(債権者)に交渉して、利息や遅延損害金を免除してもらい、毎月の返済額を減額します。
裁判所を介す必要が無く、生活への影響が少ないため、多くの人がこの「任意整理」を選んでいます。
借金を減額する方法②個人再生で借金を5分の1〜10分の1に減らし自宅を残す
「個人再生」は、裁判所の認可を得て借金を減額してもらう方法です。
「個人再生」のなかには、「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」という、住宅ローンを個人再生の対象から外して自宅を手元に残す制度もあります。
「個人再生」で借金が5分の1〜10分の1に減額でき、3~5年の分割で返済していきます。
ただし、住宅ローンを除く借金総額が100万円以上、5,000千万円以下であることと、3~5年で返済できる見込みがあるかという2つが条件です。
そして、手続きに約1〜1年半程度の期間が必要であり、ほかの「債務整理」よりも難易度が高いです。
「個人再生」のメリットは、持ち家や車が残せる可能性があることです。
デメリットは、以下のとおりです。
- クレジットカードが使えない
- 一定期間キャッシングやローンなど新たな借入が不可
- 保証人が残債の一括請求をされる
- ブラックリストに掲載される
- 官報に掲載される
借金を減額する方法③自己破産で借金の返済を免れるがギャンブルは✕
自己破産は、裁判所から免責許可をもらい、ほぼ全ての借金の返済を免除して手続きです。
他の「債務整理」をしても返済しきれない借金を解決できるメリットがあります。
しかし、自宅や車、預貯金など、財産が差し押さえられてしまうなどデメリットが大きいです。
また、借金の原因が射幸行為(賭博やギャンブル)や、返済不可能と知りながらの借金は、「免責不許可事由」になり自己破産が認められない可能性が高いです。
なぜなら、自己破産では、借金の支払い義務を免除する(免責)決定を、裁判所にしてもらう必要があるからです。
借金の理由が賭博やギャンブルであると、その「免責」が受けられない可能性があります。
免責などの判断は、専門家でないと難しいため、弁護士に相談するのが1番早いです。
借金を減額する方法④特定調停で調停委員を間に入れて和解する
これまで紹介した債務整理では、「任意整理」は裁判所を通さない手続きであり、「自己破産」と「個人再生」は裁判所を通す手続きでした。
あと、もう一つ裁判所の調停で調停委員が間に入り、解決する方法が「特定調停」です。
「特定調停」では、債権者と交渉し利息のカットを目指します。
債務整理に関しては弁護士に相談するのが確実です!
借金が理由で離婚したいときの注意点
借金を理由に離婚したいとき、以下4点に注意してください。
- 住宅ローンが残っている場合の財産分与
- 借金を肩代わりしていた場合
- 子どもがいる場合の養育費請求
- 自己破産した場合の養育費の支払い
- 慰謝料請求は可能か
以下に、それぞれの注意点を説明します。
〈注意点①〉住宅ローンが残っている場合の財産分与
基本的に、住宅ローンの残債がある場合は、ローンの名義人に返済義務があります。
住宅ローンは「共有財産」とみなされるので、夫婦の連帯責任があります。
「参考:【離婚後の借金は折半?】 借金と財産分与についての考え方」
そして、「財産分与」では、次の2パターンになります。
住宅ローンの財産分与|パターン①現在の家の価値 > 住宅ローンの残債
パターン①は、現在の家の価値が住宅ローンの残債を上回る場合(アンダーローン)、離婚後に返済義務がありません。
たとえば、以下のような場合は、家を2,000万円で売却して住宅ローンを完済すると、1,000万円が手元に残ります。
- 現在の家の価値:2,000万円
- 住宅ローンの残債:1,000万円
この1,000万円が財産分与に対象になり、原則的に夫婦で2分の1ずつ分けることになります。
住宅ローンの財産分与|パターン②住宅ローンの残債 >現在の家の価値
パターン②は現在の家の価値が、住宅ローンの残債より低い場合、家を売却しても住宅ローンが残ってしまいます(オーバーローン)。
この場合は、ローンの名義人にローン残債の返済義務が残ります。
たとえば、以下のような場合家を1,000万円で売却しても、住宅ローンが500万円残り現在の家の資産価値は「なし」と判断されます。
- 現在の家の価値:1,000万円
- 住宅ローンの残債:1,500万円
財産分与は、基本的にはプラスの財産を折半するため、資産価値のない家は分与の対象外になります。
そして、住宅ローンの残債1,500万円は、そのままローンの名義人に引き継がれることが多いです。
〈注意点②〉借金を肩代わりしていた場合
結婚生活の中で、夫(妻)の借金を肩代わりした人は、その金額を財産分与の金額に加算して計算することができます。
例えば、夫婦の共有財産が400万円で、100万円の借金を肩代わりしていた場合は、財産分与の対象は合計500万円になります。
その半分の250万円を財産分与として請求が可能です。
しかし、肩代わりした借金が生活費などの場合は、「日常家事債務」とみなされるので、夫婦で返済しなければなりません。
〈注意点③〉子どもがいる場合は養育費請求が可能
借金が理由で離婚になっても、子どもの養育費請求はできます。
養育費は子供に必要な生活費なので、借金の有無にかかわらず支払う義務があるのです。
借金で自己破産をしてしまったとしても、養育費の支払いは免れません。
養育費の金額は、それぞれの夫婦の生活などによって違い、子どもが成人するまで支払い続けなければなりません。
養育費の相場については、以下の記事の「5.4.1〈参考〉裁判所の養育費算定表」が参考になります。
「参考:【妻の浮気で離婚?】後悔しないために夫が今すぐやるべきこと(5.4.1〈参考〉裁判所の養育費算定表)」
そして、万が一、養育費の支払いが滞ったら、「養育費減額調停」をすることで相手が支払える金額に見直すことができます。
「養育費減額調停」は、以下のようなケースで行われることが多いです。
- 支払う人の収入が減ったとき
- 受け取る人の収入が増えたとき
- 支払う人が再婚し、扶養家族が増えたとき
- 受け取る人が再婚し、再婚相手が子どもと養子縁組をしたとき
調停委員を間に入れて話し合い、お互いの支払い条件に折り合いがつかない場合、「養育費減額審判」をして決着をつけます。
〈注意点④〉自己破産しても養育費の支払い義務は残る
多額の借金をした場合、自己破産が気になりますよね?
結論からいうと、自己破産になっても、養育費の支払い義務はなくなりません。
約束を破った場合は、財産差押えをされることがあります。
養育費を減額したい場合は、配偶者と話し合うか、家庭裁判所で「養育費減額調停」を申し立てます。
〈注意点⑤〉慰謝料請求は発生しない可能性が高い
慰謝料とは、精神的苦痛を与えられた場合の賠償金になります。
そのため、借金のみが理由の離婚では、基本的には慰謝料は発生しない可能性が高いです。
しかし、借金が民法第770条第1項「悪意の遺棄」や「婚姻を継続しがたい重大な事由」にあたる場合は、慰謝料を請求できる可能性が高いです。
また、借金のほかに浮気やDVなどほかの重大な理由があった場合は、慰謝料を請求できる可能性があります。
しかし、借金をした配偶者の支払い能力が低い場合は、慰謝料を払ってもらえない可能性があります。
また、自己破産をした場合も、原則として「免責」の対象になります。
ただし、自己破産で「免責不許可事由」になったり、慰謝料請求権が例外的に「免責」対象にならない場合は請求できます。
慰謝料をしっかり支払ってもらうためには、夫婦で合意した内容を公証役場で「公正証書」として残しておきましょう。
「公正証書」があると、慰謝料の支払いがストップしたときに、スムーズに差押えをすることができるため安心材料になります。
借金で離婚せずに結婚生活を継続したい人は夫婦で話し合うべき
夫(妻)の借金が発覚しても、少額で常習性がなく反省している場合などは、離婚を選ばない可能性がありますよね?
そのような場合でも、借金がどの程度のもなのか、どのように返済するべきかを弁護士などに相談しましょう。
また、結婚生活を継続するためには、次のことを夫婦でしっかりと話し合いましょう。
- 二度と借金はしないと誓約させる
- 給与口座などお金の管理する
- 高額の買い物は必ず同意を得るようにさせる
- 基本的に小遣い制にして必要なときのみお金を渡す
- 家族カードを絶対に渡さない
上記を話し合い誓約書に記載してもらい、しっかり証拠を残しましょう。
この際、あまりきつきつにやり過ぎると、反動で再びサラ金に手を出してしまう可能性があるため注意してください。
まとめ
借金が理由で離婚する場合の返済義務や注意点などを紹介しました。
借金が原因の離婚は、夫婦の話し合いで合意がされれば可能です。
また、合意されない場合は「離婚調停」や「離婚裁判」の場で決着をつけます。
借金を減額するための方法は以下の4つであり、ぞれぞれのメリット・デメリットを弁護士などに確認しましょう。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
- 特定調停
また、借金が理由で離婚したいときの注意点としては、以下のとおりです。
- 住宅ローンが残っている場合の財産分与
- 借金を肩代わりしていた場合
- 子どもがいる場合の養育費請求
- 自己破産した場合の養育費の支払い
- 慰謝料請求は可能か
そして、借金を理由に離婚は選ばず結婚生活を継続したい人は、夫婦で今後のことをしっかりと話し合いましょう。
そして、話し合ったことを誓約書に記載してもらい、証拠として残しておくことを覚えておいてください。
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